乳がんとその術式


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乳がん社会的概要

女性の乳がん罹患者数は、年間約5万人を超え、年々増加の一途をたどっています。今や、12人に1人が罹患すると言われています。他の癌と比較しても乳癌が最も高く(図1)、今や女性にとっては看過できない社会問題と言えます。乳がんの増加には、食生活の欧米化、晩婚化に伴う出産の高齢化などのライフスタイルの変化が影響し ています。
この切実な状況下で、どのように乳がんを克服するか、また数多くの選択肢の中から最善の治療方法を選択するのは、人生に関わる極めて重要な課題と言えます。

(図1)


乳房温存手術

現在においては全体の6割以上を占め、乳がん治療において重要な位置づけとなっています。これは “温存” という言葉の響きから、多くの患者さんに受け入れやすいことが影響していると考えます。

乳房温存術の適応条件
大きさ 3 cm以下で単発(多発でない)
乳がんが広範囲に拡がっていない
術後整容性が保たれる(症例1,2)
場合などです。乳房 “温存” なのに、術後に乳房の著しい変形を来たすようでは、全く意味がありません。乳房が小さめの方にとっては、乳がんが1 cmでも、著しい変形を来たす場合があります。

私が執刀した乳房温存術後の形態です。

症例1


右A領域 Stage IIA 症例

症例2


右C領域 Stage IIA 症例

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Stage II 以下なら、乳房温存手術は乳房全摘手術と治療成績は同じです。
術後の成績乳房温存手術+術後放射線照射 ≒ 乳房切除
しかしながら、私が根治性を検討する上で、常に意識している点が2つあります。
その1 乳房温存手術における腫腫切除断端陽性へのリスク
その2 乳房切除全例に放射線治療を行っても治療成績は同じか?
その1への解説
乳房温存手術の場合は、乳腺を “温存” する訳ですから、腫瘍切除断端が陽性になるリスクを常に伴います。
腫瘍切除断端が陽性であれば、再発リスクは当然上がります

術後の再発イベントは、生存率に悪影響をもたらします。
根治性を保つ上で、腫瘍切除断端を陰性にすることは極めて重要な課題です。

乳房切除術と治療成績を同じにするためには、腫瘍切除断端が陰性でかつ術後に放射線治療を行うことが必須になります。
その2への解説
乳房切除後に全例に放射線治療を行えば、治療成績に差がでるのでは?という疑問です。
リンパ節転移が4個以上の場合は、胸壁および鎖骨領域への放射線照射が必要となります。
しかし、リンパ節転移陰性ないし3個以下の場合は、放射線治療を行わないのが一般的です。

最近、リンパ節転移1-3個の症例にも放射線治療を行うと、再発率・生存率ともに有意に減少したとの報告がなされました。
すなわち、乳房切除症例に全例放射線治療を行えば
術後の成績: 乳房温存手術+術後放射線照射 < 乳房切除+術後放射線照射
になるのではと考えます。


乳房切除術 ⇒ 乳房再建

乳房切除術の適応条件
乳房内の広範囲に乳がんが認められる
2つ以上のがんのしこりが離れた場所にある
乳房温存手術では、整容性が保てない
場合などです。
乳房再建を行なう側からの立場からすると、乳房切除後の方が、乳房再建は行いやすいです。

Case 1

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Case 2

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Case 3

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私の持論
乳房温存手術においては、腫瘍切除断端陽性のリスクを常に伴います。
腫瘍切除断端陰性にするためには、乳房切除が最大の近道です。
乳房切除症例に対しても、整容性を考慮しながら、積極的に放射線治療を行います。