乳がん診療日記

病院の方針があるため、手術の際は業界標準の手洗いを行なっていますが、私個人的には、専門的な手洗いなど不要と常に思ってます。

昔は、オペ室の手洗い場の蛇口には、滅菌水が流れてました。
今ではどこも水道管が直結です。
ブラシでゴシゴシ必死に手を洗っても、我々の皮膚が傷つくだけで意味がないと言われたりもします。

私の思いを反映するこんな論文があります。
『非滅菌の手袋を用いてたとしても皮膚外科手術後の感染率は変わらない』
http://archderm.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2538523

術後感染は、術野における常在菌の菌量そして創部の血流に依存します。
すなわち手術終了間際に、大量の滅菌生理食塩水で創部を荒えば菌量は確実に減ります。
本当は水道水で良いかもしれません。
大量の水で洗えば、手袋の綺麗度合いなど比較になりません。
そして血流に影響しないよう愛護的手術を実施すれば、術後感染は防げると考えています。

もっとハードルの高い人工物を扱う乳房再建であっても同じことが言えます。
この論文での感染率は 2.0-2.1% 程度
私が手がけてきた人工物を用いた乳房再建における感染率は、この論文よりも少ない 1.7 %です。

ま、それでも手を洗わざるを得ない業界のしきたりには勝てませんが、いつの日か滅菌手袋や特別の手洗いが不要の時代がくるでしょう。

手術を受ける側からすれば、なんとなく手を洗って滅菌手袋を使って欲しいと思うでしょうけれども、ここに医学的根拠がなければ継続する意味がなくなります。

やっぱ、感染率が一緒でも、滅菌手袋使って欲しいですかね?
プロは結果を出してナンボ。
その過程にこだわって、言い訳を探すようではあきません。

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